拍手ログ。
fiction=1:想像によって作り上げられた事柄。虚構。
2:作者の想像力によって作り出される物語。小説。作り話。
「またしょーもないこと考えてんな」って顔して横山君見てる村上君。
ホンマや。
『しょうーもないこと』考えてる顔してるわ。
上手く隠してるつもりやろけど、案外分かりやすいねんで、裕ちん。
どうせあれやろ?さっきゲストの女優さんに言われたん、気にしてんねやろ?
いつものことやん。何で?彼女と何かあったん?
楽屋のソファ、親指の爪を噛みながら焦点定まらん横山君に心ん中で問いかけて。
今でもやっぱなんやろか。
エイトのファンじゃない人たち、そん人たち。
横山君、ばーってしゃべってがーって前行って、
細かいことなんか知るかーいて、面白かったらそれでえーねーんて、
そんな風に見えてんやろか?思われてんやろか?
俺がまだエイトやなかった頃、
カメラ回ってる時と回ってない時のテンションの差に、
これがプロなんかって思うより、「裏表ある嫌な大人」って見えてもうて、
ちょっと苦手やった、正直。
何してくるわけでもないのに、何言うてくるわけでもないのに、
何かめっちゃ怖かってん。威圧感あってん。
でもホンマに怖がってたん、横山君の方やってんな。
撮影と撮影の合間、スタジオの隅に置かれた小汚いスツール。
ぽつんと背中丸めて座る横山君。
おじいちゃんみたいな。
手にしたミルクティの缶、飲むでもなくただ握りしめとって。
ゆっくり息を吐き出してる横山君に、しんどさを感じたん覚えてる。
なんでそんなこっそり息吐いてんのって、
息詰めてんのって、小さいみたいに縮こまって、小さくない体折り曲げて。
『面倒臭そうな人』やなってのが、まだその頃の俺の横山君のイメージ。
エイトんなって、ドラム叩いて、ちょっとキャーキャー言われるようんなって。
「おーくらぁ」って、ちょっと舌足らずな感じ。可愛い感じ。
見た目金髪でヤンキーやのに。
「ちょっと叩かして」って、ドラムん興味なんか全然無いくせに、
俺からスティック奪って。
シャンシャンシャンって、シンバルばっか叩いてひゃらひゃら笑って、
ドラム難しなー!俺には出来ん!お前すごいわって、
ご褒美やって、手に渡されるチロルチョコ。
いや、これさっきやっさんがスタッフさんに貰ってたやつやん。
しかも何かちょっと溶けかけてるし、端っこ丸なって。
「・・・ありがと・・・ございます・・・」
言うしかないしな。まだタメ口なんか叩かれへんかったし。
「ん」って、でも優しいみたいに、穏やかみたいに笑われて、
わって、わぁって、ちょっと胸ん中ドキドキして。
俺、ヤンキーに好かれとんちゃう?みたいな。
そうやって俺をドキドキさした後、マルんとこ行っておんなじことやってん。
ベースカッコえぇって、ご褒美やって、溶けかけたチロルチョコ渡して「ん」って笑って。
うわ、何この残念な感じ。
俺だけちゃうやんって、告ってもないのに振られた感じ。
カメラに見切れる俺の腕、くいくいって、無言で引っ張って自分の横。
そうやってラスト12秒、テレビに映った俺に、母さん喜んでたわ。
『「優しい」って思われるんが、苦手な人』、
前しか見てへんかったあの頃の横山君は、そんなイメージ。
デビュー決まって太鼓叩いて、内が病気んなって内がおらんなって、
いっぱいの「不安」打ち消すみたいに輩口調でいっつも大声出しとった横山君。
「おおくるぅあ!昨日ニンニク食ったやろ!」
くさいんじゃこら!って俺にヘッドロックかましながら、
ラジオから流れるNEWSの歌に、一瞬青褪めるみたいな顔してまた大声出して。
横山君のカバンの中に、常に入ってた胃薬のビン、
みんなで知らんふりしててん。
責める、咎める人間を自分の中に作って、自分で息苦しくなって。
『可哀相な人』って、みんなで泣きそうなんを堪えてた。
二人で滝沢君の舞台。同じ楽屋。二人の楽屋。
二人でカスタマイズ。ドンキホーテに100均。
色違いの座椅子とラベンダーのアロマキャンドル。
俺の未来の彼女ごめんやで。同棲気分な滝沢演舞城。
人に滅多に見せない寝顔も、たくさん拝まして頂きました。
子供みたいなん。タオル持って腕で顔隠して。
なのにおっさんみたいなイビキかいて。
普通に寄っ掛かってくれるようんなったん、あの頃ちゃうかな。
いっぱい二人でメシ食いに行って。
「勇ましい」て、お前の食い方は勇ましいて。
心から嬉しいみたいにいっぱい食え食えって、
美味しいご飯、味覚の合う先輩、仲間、次々決まるお仕事。
幸せやなぁて、それでも打ち続けた8→1を、
大事みたいに携帯の画面なでる横山君。
世界一の『エイトのファン』やんな。自分もそこおんの、分かっとる?
全国津々浦々。
関ジャニ∞、全国行脚。
7人とジュニア。それからたくさんのスタッフさん。
ちっちゃいケンカ、ちっちゃい諍い、ちっちゃいすれ違い。
無視せんと答え出して謝って謝られて、
おっきい絆、深い絆、これまでとこれからのエイト、
ずっと一緒にみんなで一緒に、やっぱりちっちゃいケンカ、解決しながら。
東京ドーム。5万5千人。
俺の地元の住民よりたくさん。
ファン。関ジャニ∞のファン。
揺れるライトの波の中、横山君がなで続けた8→1のカケラ、
手を引く亮ちゃん、繋がる8人、挙がる16個の手。
5万5千人のファンの頂点、エイトのファンの頂点、最高で最強のエイトのファン、
『絶対大丈夫』って思わせてくれた白い腕と背中に光る汗。
「横山くーん。ご飯おごってーや」
いつまで爪噛みよんのって、横山君が座っとる横にごろんて。
「・・・何でおごらなアカンねん。俺の今年の暇さ加減を知らんのかコラ」
知っとるよ。
やれ北海道だやれアメリカやって、家族で行ったすばると行ったって、
キャッキャ言うてたやん。
「お前のが確実に稼いでんねんからお前がおごれ」
あ、ご飯行くんは拒否せんねや。
「こん前な、松岡君に教えてもうたお店でな、めっちゃ親子丼おいしいとこあんねやんか?」
そこ行きます?って、頭にスタジオから店までの距離浮かべながら。
「卵がとろっとろでーとか言うてた?」
「鶏肉の味が濃くてー言うてた」
行きしょ。
そんな『しょーもないこと』考えてへんで。
「不安」打ち消して欲しいんやったら、あん時横山君がしてくれたみたいに、
大声でヘッドロックかましたるで?
気付いとらんかも知らんけど、今、横山君が爪噛むん止めたん見て、
ヤスもマルもふって息吐いてんで?
横山君がそうやって俺におごれ言うの聞いて、
村上君とすばる君、やっと横山君から視線外してんで?
『しょーもないこと』考えるん、もう横山君のクセやんな。
仕方無いわ。それ止めさすんは諦めるけど。
でも、その『しょーもないこと』が間違っとるよって、それを否定すんのは止めへんよ。
「しゃーないなー、そんなおごりたいんやったら行ってやるわ」
ニヤニヤしながら立ち上がる横山君の携帯が鳴って。
「あ、どっくんや」
楽屋のみんなが、ゆっくり笑う。
大丈夫やで。
横山君が考えてるほど、みんな大人ちゃうし子供ちゃうねん。
これからやって何回やって、横山君の『しょーもないこと』、
みんなで打ち消してあげますから、取り敢えず。
「お腹へったぁ〜!」
亮ちゃん早よ切ってー!おーやーこーどーんーっ!
「あー大倉がうるさいから切るわ!気ぃつけよ!ほいじゃな!」
タクシー呼ぼかて、楽屋のドア開けながら携帯開く横山君の後追いかける俺に、
「大倉」
サンキュな、って、目と空気で感謝伝える村上君に。
「今度はヒナ君にもおごってあげますわ、親子丼」
「おーくらぁ」
トイレの前で俺を振り返る横山君から、『しょーもないこと』は完全に消えていて。
ヘラリ笑う俺に笑い返してくれる横山君と、
これから食べられる親子丼のとろとろ卵に、幸せな気分でいっぱいんなった------。
end.
20081217.