フィクション。



























俺って昔っからそうやねん。
ホンマにずっとそう。
昔っから、いっつも、
誰の「いちばん」にもなられへんねやんか。
色んな人に好きやて言われても、
色んな人に大切やて言われても、
でもその誰も俺が「いちばん」やないねん。


俺のこと可愛い可愛い言うてくれてたのに、
手がかからん子やなぁて褒めてくれてたのに、
オカンも俺が「いちばん」やなかってん。
知らんおっさんが「いちばん」やってん。
俺のこといっぱい怒ってくれて、
いっぱい心配してくれていっぱい遊んでくれて、
そんでもじいちゃんも俺が「いちばん」ちゃうくて、
俺のあたまなでながら、でもばあちゃんが「いちばん」やってん。
ドッジボールもドロケイもいっつも一緒やった緒方も、
俺の世話焼いてくれてた温品先生も炭谷先生も、
それでも俺を「いちばん」やとは言うてくれなんだん。


13歳の時の彼女も、
14歳の時の彼女も、
15歳の時の彼女も、
俺が「いちばん」のフリしてホンマは自分が「いちばん」やってんか。
16歳の時の年上の彼女は、最初から俺は3番目やって言うてたし、
事務所に入ってからは、
「いちばん」ってめっちゃ遠い。
もう俺の目では見られへんくらい遠いねんな。


今はあいつらおるから。
でもあれやな。
あいつらもいつか俺以外のどっかに、
自分の「いちばん」見つけて離れてくんやろな。


誰の「いちばん」にもなったことがあれへんから、
誰のことも「いちばん」に出来へんねやんか。
ごめんな。
淋しい?
そうやなぁ。
淋しいなぁ。
でも慣れてん。
「いちばん」って、重そうやん。
そんなん抱えたないわ。
こんなんも淋しいんかなぁ。
もう分からへんねんな。
誰かの「いちばん」になりたいと思っててん。
でも望めば望むほど「いちばん」から遠ざかってんな。
やからもうええねん。
もうずっと、これからも、死ぬまで、
俺は誰の「いちばん」でもないねん。