フィクション。

fiction=1:想像によって作り上げられた事柄。虚構。
2:作者の想像力によって作り出される物語。小説。作り話。















































横山君が爪を噛んだ回数は、今日後輩が怒鳴られた回数。
俺がまだエイトやなかった時も、そうやって俺のために爪噛んでくれてたん?
キレイに見える指先のギザギザに、切ない感謝で息苦しくなった。




ホントは知ってんねんで。
でも誰も言わない。
それがあんたに対する優しさだと思ってるから。
でもきっと、本当は、みんなが知ってることを、
知ってて何も言わないことを知らない振りしてることを、
あんたはきっと知ってんねんな。
それもみんな知ってる。
そのこともあんたは知ってる。
終わりないなぁ。
やからもう、ええんちゃうの?もう、ええねんで?






ムカつく。
ホンマムカつくわ。
ムカつくほど大人なあんたがムカつく。
お前も大人んなったなぁって言いながら、
俺をなでる手のひらは俺を子供扱いしてる。
ムカつく。
でもその手のひらに嬉しくなってる自分もムカつくほど分かってる。
ムカつくわ。ホンマムカつく。
いつまでもムカつく人であって欲しいとか、口が裂けても言わんけど。






俺らのおらんとこでは俺らを褒めんのになぁ。
おったらアカンねんなぁ。
カメラが回ってへんかったら、穏やかに手伝ってくれんのになぁ。
回っとったらアカンねんな。
俺が違うとこに行きたなってたら、気付いて行かしてくれんのに、
自分が行きたいときは、笑って我慢すんねんなぁ。
「淋しい」って言いながら、
それを真に受けた人間は拒否すんねんなぁ。
難しいわ。でも簡単やねんな。簡単やと思っとって欲しいねんな。






人に言われるほど、俺、そんなに優しいないで。
目に見えるやろ?
耳で聞き取れるやろ?
分かりやすい「優しい」やから、そう思われとるだけやで。
こそこそ気ぃ回さんでもええのに。
好意的な、肯定的な感情貰うんは恥ずかしいねんな。
分かりやすい俺のん、キミ君にちょっとあげたいわ。






何も言わんでくれたん、お前だけやし。
ヒナの五月蠅い強弁も在り難かったけど、
お前の無言も在り難かってん。
俺とお前は似てるけど、
外に向ける俺と内に向けるお前と、そこは違うやんか。
俺が外に向けてて、お前にも向かわせとったとき、
俺からの傷も、自分で向ける傷も、両方負っててんな。
そんでヒナも俺が独り占めしてたしな。
すまん。
まだどっかにあの時の血が溜まってんねやったら、
一緒にどっかに捨てに行こうや。
今度はヒナには内緒でな。






俺って現代っ子やって思うわホンマ。
基本冷めてるしな。
熱くなるんとか、カッコ悪いって、ちょっと思ってる正直。
横山君もそうやんな?
冷めてるっていうか、冷静やもんな。
状況判断とか、前は出来へんかってん俺。
周りが逐一教えてくれるし知らんでえぇって空気やったし。
やからミスってんな。
あの時つねられた頬っぺたの痛み、まだ覚えてんで。
冷静に、何も言わんとつねられた頬っぺた、
どんな凶器で殴られるより痛かってん。