おなかをすかせた男の子とえいと。



青い空の下の大きな山の中の大きな木の下で、
一人の男の子が泣いていました。
おなかがすいて、おなががすいて、泣いていました。


そこに8人がやってきました。


やすだ君は、自分もおなかがすいて辛いかのように泣きました。


まるやま君は、自分はおなかがすいていないことが申し訳なくて泣きました。


にしきど君は、「男がそれくらいで泣くなや!」と怒鳴りました。


うち君は、どう見ても食べられそうにない草や花を集め始めました。


おーくら君は、自分はおなかがすいてなくて良かったと思いました。


すばる君は、男の子に近づけずに、木のかげからみんなを見ていました。


よこやま君とむらかみ君は、一瞬目配せをしたあと、山の奥に駆けていきました。




しばらくすると、
たくさんの木の実や果物を抱えたよこやま君とむらかみ君が帰ってきました。




男の子はそれらをおいしそうにおいしそうに食べました。


やすだ君とまるやま君は、
男の子のおなかが満たされていくことが嬉しくて泣きました。


にしきど君は、「次からは自分でいくねんで」と、今度は優しく諭しました。


うち君は、集めた草花を後ろ手に隠しながら、「良かったな」と笑いました。


おーくら君は、おいしそうに食べる男の子を見て、おなかがへってきたと思いました。


すばる君は、男の子の笑顔に安心して、みんなのところに来ました。


よこやま君とむらかみ君は、
でっかい熊にあった、めっちゃ高い木になっとった、と、
おもしろおかしく脚色しながらみんなを笑わせました。


おなかがいっぱいになった男の子は、
お礼を言ってその場を立ち去ろうとしましたが、
8人はわいわいおしゃべりしていて、
男の子の「ありがとう」は届きませんでした。
しかたがないので、地面に小枝で「ありがとう」と書いて、
男の子は山を降りていきました。


青い空の下の大きな山の中の大きな木の下で、
えいとは今日もえいとでした。