もうひとつのANOTHER。



「自分が引いてやらないといけない手」が離れていく淋しさも、


さっきまで目の前にあったはずの背中が、
もう見えないほど遠くに行ってしまう焦燥感も、


いくつもいくつも乗り越えて。






最年長だからと、怒られたり注意されたりする役目を担うことになってしまって、
それでも、どんなに罵声を浴びせられてもキツイ言葉を吐かれても、
ひょうひょうと受け流してるように見せて、
他のジュニアの子たちには、あ、大したことやないんやって思わせて、
「俺ばっかり貧乏クジや」と、
軽く笑うその人の、
でもカバンを持つその右手の指が震えていたことに、
きっと隣の二人は気付いてて。






舞台袖から客席を見て、
「・・・何か空席目立つな・・・」
と俯くメンバーの背中をバシバシ叩きながら、
「アホ!よう見てみぃや!どう考えても空席よりお客さん座っとる席のが多いやんけ!」
俯くことを許さない、誰よりも大きな声に顔を上げて。
そのポジティブに、隣の二人は笑ってて。






一陣の風。
何もかもを捻じ伏せる、その存在感と魂を吹き込まれた歌と。
手を差し出せば、しびれるほどの空気の振動を与えるカリスマ性で。
その眼差しに、隣の二人は引き上げられて。








緊張で白くなるまで握り締めた手の平を、
「ほい、アメちゃんやるから手ぇひらきや」と広げてくれる。


緊張が喉に張り付いてセリフが出なくなった口を、
「ちょぉ聞いて、昨日な」笑わせて開かせてくれる。


緊張に眩んで前が霞んで見える目を、
「俺見てみ、めっちゃ男前やろ」焦点を合わせてくれる。








安心を、
安全を、
自信を、
自尊を、


その3人の背中から、幾度も幾度も受け取って。








込み上げてくる涙を拭ってくれるのは、いつも三つの手。
吐き気がするほどの怒りを平らにしてくれるのは、いつも三つの眼差し。




帰還する場所には、いつも三つの笑い声。






「揺るがないもの」を初めて信じたのは、その三つの絆。








緞帳が上がる。光が当たる。
満員の客席からは拍手が起こる。
弛まない感謝を述べながら、
背中を温かく見守ってくれる存在に涙を滲ます。








決して混ざることは出来ないその三角に、
それでも両手を広げてくれるその三人に、










羽ばたいてゆけるのは、
高く飛び立てるのは、




きっと、きっと・・・・・・・・・。









ただいま!と言える喜びも、
お帰り!と言ってもらえる幸せも、


それを作ってくれたのは、




きっと、きっと・・・・・・・・・・・・。