フィクション。

































































「・・・もう離してや・・・横山君までおちてまう」
「・・・一緒におちたろか?」
「そんなんしたら、俺がめっちゃ泣くって分かっとっても?」
「・・・・・」
「・・・なぁ、もうええよ。もう充分やで。なぁ、もう、俺の重さ、捨ててええねんで?」
「・・・俺の力が足らへんねんな」
「横山君」
「俺にもっと力があったら、お前引っ張り上げてやれる力があったら、
こんなとこずっとおらんでええんやんな」
「ちゃうよ、横山君」
「俺のせいやんな。やいやい言わんともっと鍛えといたら良かってんな。
ちゃんと力つけとったら、お前引っ張ってやれんねんな」
「横山君・・・ちゃうよ・・・ちゃうよ・・・」
「正直な、段々感覚無くなってんねん、俺の腕。
お前の腕、ちゃんと握れとるか、たまに分かれへんなんねん」
「・・・横山君、やから、もうええって。なぁ、もうええよ。
おちても死ぬって決まったわけちゃうねんで?下が見えんだけで、助かるかも知れんねんで?」
「・・・長い間握りっぱなしやったから、指が硬直して離されへん」
「俺が、横山君の手、指、1本1本はずしてくから」
「・・・離されへん・・・」
「なぁ、ホンマにええねんで?なぁ、ホンマに。
掴んどってもろうた腕の跡は、ずっと残んねんから」
「・・・・・」
「いちにのさん、で、離してや?」
「・・・・・」
「いくで?いち、にの、さん」
「・・・・・」
「・・・横山君・・・・」
「・・・・あとちょっとええやんけ」
「・・・・・」
「こんだけ握ってきてんから、上げてやれんでも、ずっと落とすんせんかってんから、
もうちょっとくらいええやんけ」
「横山君」
「引っ張り上げてやれんなら、せめて握り続けるくらいええやんけ」
「・・・しんどいやろ?しんどそうやん。もうそっから動きたいやろ?どっか行きたいやろ?」
「お前も一緒に、や」
「・・・もう無理やって・・・。横山君の腕も、俺の腕も、もう限界やって・・・」
「・・・泣くなや・・・涙のぶん重なんねんぞ」
「・・・も・・・ええよ・・・ええよ、横山君」
「・・・やったら、お前が泣きやむまで、それまで掴んどいたるわ」
「・・・泣くん、やめたで・・・」
「まだ泣いとる」
「泣いてへんよ」
「泣いとる」
「泣いてへん」
「泣いとる」
「・・・・泣いて・・・っ・・・」
「・・・内、内・・・・」
「・・・・っ・・・・」
「掴んどったるから、離さへんから、絶対落とさへんから・・・ずっと泣いとってええで」