『僕たちのヒーロー』



光の世界しか知らないヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
闇の世界しか知らないヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつもいつも助けてくれるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつもいつも突き放すヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつも笑ってるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつも泣いてるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。




「こっちに行ってみようや」なんて、
知らない道に踏み込んで案の定迷ったり、
「こいつにかけようや」なんて、
掛値無しの信頼を置いて案の定切り付けられたり、


「もー何やってんねんなー」と、
表情の読めない顔に投げかけても、
「大丈夫やって」と、ただ一言返されるだけで。




これ以上無いくらい、適当でいい加減な「大丈夫」なのに、
涙が出そうなほど安心するのは何故だろう。




自分達と同じ目線まで降りてきてくれるんでもなく、
自分達を同じ目線まで引き上げてくれるんでもなく、


初めから段差などどこにも無いんだと思わせてくれるその背中に。




自由奔放なのに規律を守って、
傍若無人なのに優しくて、
自分勝手なのに気を使って、




大切にされることに慣れてしまって、
心地良い空気に慣れてしまって、
それを気付かせないように笑うその顔に慣れてしまって、




誰にも見せない涙で滲んだヴィジョンに、
自分以外の未来を映して微笑むその人に。






光の世界しか知らないヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
闇の世界しか知らないヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつもいつも助けてくれるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつもいつも突き放すヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつも笑ってるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。
いつも泣いてるヒーローなんて、
本当のヒーローじゃない。




「ありがとう」


きっと、「何がやねん」って照れて怒るから誰も口にしないけど。


「ありがとう」


僕たちを護るために諦めて捨ててきたものを、
いつか必ず拾い上げて返すから。


「ありがとう」


大人にならざるを得ない過去で、
子供の戯れを残してくれた場所を今度は僕らが守るから。


「ありがとう」


幸せは与えてもらうものでも掴むものでもなく、
気付くものなんだと気付かせてくれて。


「ありがとう」


本当のヒーローを、僕たちは知っている。